“地域密着”と“自社一貫”を守りながら全国に分譲マンションを供給してきた株式会社穴吹工務店様。戸建事業や不動産ソリューションなど幅広い事業展開で、上質な住まいと暮らしを提供しています。約80カ所の拠点に届く請求書は月に約2,000通。そのほとんどを電子請求書に切り替え、取引業者と一緒に業務効率化を実現されました。IT化による建設業界の未来を見据えた取り組みを伺います。
紙の書類が多い建設業界で効率化を図る
― 事業概要を教えてください。
業務管理部 部長(以下、部長):穴吹工務店は、ゼネコンとデベロッパーの能力を備えた独自のスタイルで、地域に根ざしたマンションを全国に供給しています。「サーパス」ブランドの自社分譲マンションは、用地取得から設計、施工、販売に保守・管理などのアフターサービスまで、自社一貫体制を敷いているのが特徴です。また、マンション事業のノウハウを生かした戸建事業や、多彩な不動産活用を提案する不動産ソリューション事業も展開し、さまざまな不動産ニーズにお応えしています。
主力の分譲マンションは沖縄県をのぞく46都道府県に1,490棟を供給してきました(2020年6月現在)。本支店14と、建設現場の作業所やマンションギャラリーなどの営業所、合わせて約80カ所の拠点を構えています。
各拠点に届く請求書を合わせると、月に約2,000通受け取っています。取引業者様と弊社の請求書業務の効率化を目指し2020年6月より、ほぼすべての請求書をデジタル化しました。
― 電子請求書を導入された経緯を教えてください。
業務管理部 次長(以下、次長):弊社には、主だった部署の10名ほどが参加する『穴吹ミライ会議』というプロジェクトチームがあり、新たな時代を見据えた業務改善を提言するといった活動をしています。建設業は紙の書類の多さが課題で、その効率化を目指し、まずは取り組みやすい請求書のデジタル化に踏み切ったのです。
部長:これまでもペーパーレス化を目指し、工事担当者にiPadを持たせる取り組みなどを行ってきました。しかし、業界全体ではIT化はまだまだ遅れ気味です。withコロナ時代ともいわれる今後、建設業のニューノーマルを考えていかなければならないと思っています。
― デジタル化にあたって、サービスの比較検討はされましたか?
次長:いくつか調べてみましたが、受取側として使えるサービスは多くないんですね。また、発行側の取引業者様に初期コストや使用料のご負担をお願いするわけにはいきません。取引業者様が無料で使える受取サービスだった点が、『BtoBプラットフォーム 請求書』を導入した決め手になりました。
1注文1請求書で届く、束になった請求書
― 『BtoBプラットフォーム 請求書』導入前の受取業務はどのようなフローでしたか?
西日本支社 戸建営業部 営業課担当:弊社のコーポレートサイトにある取引業者様向けのページに、専用書式のExcelデータを置いていました。取引業者様はダウンロードしたファイルに請求内容を入力して、印刷、押印し、各現場作業所や営業所に郵送します。請求書の処理は各現場が担当し、社内ワークフローシステムに入力していました。支店に直接届く、広告媒体や設計事務所、測量士さんなどからの請求書も、すべて同じシステムに入力します。
社内承認を期限までに完了させるため、取引業者様にその数日前には発行・郵送していただく必要があります。内容不備で差し戻すと間に合わない場合はメールやFAXで訂正したものを送っていただき、あとで原本を差し替えていました。
西日本支社 戸建営業部 工事課担当(以下、戸建工事担当):支店では戸建営業や分譲マンションの工事費など、部門ごとに処理を進める担当がおり、私は戸建工事を担当しています。受け取る請求書が一番多い部門で、40社あまりの取引業者様から月平均140件、多い時は190件ほど受け取ります。たとえば1通の中に25件分入っていることもあり、1行1明細でシステムに入力していくのです。
西日本支社 四国支店 工事課担当(以下、四国支店担当):分譲マンションの場合も、多いときは月80通ほど受け取ります。工事の注文1件に対して1枚の請求書が発生しますので、束になって分厚い封書が届いていましたね。
次長:各拠点が受け取ってシステムに入力した後の請求書原本は、支店に集約してファイリングしていました。業者コード順に並べてリスト化して管理するのですが、添付書類が多く、ひと月に1ファイルというボリュームでした。
手厚いサポート体制で98%デジタル化を実現
― 現在はほぼすべての月末締請求書をデジタル化されたとのことですが、取引業者にはどのようにご賛同いただいたのでしょうか?
次長:現在、紙で受け取っているのは20社程度、割合でいえば全体の2%程度です。秘訣はもう、徹底的なお願いです。デジタル化には最初から8割以上の取引業者様の賛同が必要だと考えていました。紙と電子が混在すると、請求書を処理する現場事務所などに、かえって多大な負担をかけることになるからです。
事前にビデオ会議ツールを使ったWeb説明会を開催し、トータルで1,200社ほどご参加いただきました。導入当初に行った支援はマニュアルダウンロードのご案内やレクチャーなどです。また、電子請求書の発行の仕方を記事にしたブログも、取引業者様向けページで公開しています。
― かなり手厚いサポート体制を敷かれたのですね。
次長:個人事業主、いわゆる一人親方・職人さんのような方はパソコン自体持っていないこともあります。こちらからお願いするからには責任をもって徹底的にサポートしなくてはと当初から考えていました。今は、そのような取引業者様は、現場作業所にあるパソコンを使ってその場で請求書を作成、発行される場合もあります。現場事務担当者が相当力になってくれていると感じています。
― 電子請求書にどのようなメリットを感じますか?
四国支店担当:同じ企業でも注文ごとにバラバラで来ていた請求書が、電子データ化により明細をまとめられるようになり、チェックの手間が軽減されました。
戸建工事担当:取引業者様が送信されたら確実に届きますし、請求書が今どこにあるのかも一目でわかるようになりましたね。
次長:取引業者様も、一度発行すれば履歴から作成できる機能をうまく活用されています。差し戻しも修正も郵送と違って画面上で完結しますし、請求書作成の効率化は先方にとってもメリットです。
導入前後は、新型コロナウイルスの感染が拡大している時期でした。弊社も首都圏の拠点は、原則在宅勤務となりましたが、電子請求書に切り替えたタイミングだったのでデータで処理し、承認もテレワークで完結できてとても助かりました。もし電子請求書に変えてなかったら、郵便物の受け取りや仕分け、押印処理のために出社も必要だったでしょう。状況は取引業者様も同様だったようで、それもあってご理解いただきやすかったのかなとも思います。
ニューノーマル時代を切り拓くデジタル化による業務改善
― 今後の展望をお聞かせください。
次長:新規の取引業者様も増えていますので、電子請求書サポートのブログなどもご案内しつつ、デジタル化率は引き続き高めていきたいです。また、建設業界で紙のやりとりが最も多く煩雑な、契約を交わす際の請負契約書や注文書・注文請書などもデジタル化していければ、『穴吹ミライ会議』で目指す業務改善の実現にさらに近づきます。
部長:ニューノーマルという言葉も広まり、世の中の仕組みが大きく変わろうとしています。デジタル化の徹底を今後も進めて、ますますの業務効率化を目指していきたいですね。